「陸屋根の危険~オーバーフローは必要か?」
陸屋根とは屋根(バルコニーの場合有り)の形状が平面状になっているものを言います。木造建築の場合、屋根の形状は切妻や寄棟が多いので、軒先には軒樋が設置されています。豪雨などで樋の排水能力を上回った場合は軒樋から雨水が溢れ出しますが、室内などへの影響は少ないと言えます。しかし、陸屋根の場合、屋根外周にはパラペットなどの立上りがある事が多く、仮にドレンが詰まっていますと雨水の逃げ場がありません。パラペットの高さに比べサッシの位置が低い事が多い為、ドレンの詰りは重大な水害に直結する可能性が高いと言えます。
昨今の天候と言えば、ゲリラ豪雨、爆弾低気圧、殺人熱波など衝撃的な名前がニュースに登場するようになりました。特に突然やってくるゲリラ豪雨には事前の備えが大事だと言えます。巷に出回っている資料からでも確認出来ますように、例えば竪樋がVP75とした場合、一つのドレンで対処できる屋根面積(陸屋根の場合)は197㎡(雨量100㎜/h)であったり、73㎡(降雨強度160㎜/h)と記されています。73㎡が解である時の竪樋の排水量は7.21邃骭/sとなり、一つのドレンが1秒間に7.21邃唐フ雨水を排出してくれるという事になります。1時間で25,956邃刀閼25.956緕・となります。しかし、これらは最適な条件下での数値であります。実際にはドレンが詰まっていたり、ストレーナーに枯葉などが堆積し、流れが悪くなっている事がありますので、その場合にはこの数値は当てはまりません。また、各地域に於いて降雨強度以上の雨量が降らないとは誰も言えないのです。今までは大丈夫だったとしてもこれからも大丈夫という保証はどこにもありません。
掃除を怠って流れが悪くなっているドレンはたくさん有りますし、屋上が池のように満水状態になっていても放置されている所も多々存在します。そもそも定期清掃をしにくい場所であってもそこにドレンが存在している場合もあります。可能ならば、どんなに小さな面積の屋根だとしても同一エリアに2つ以上の排水口を設置する事が望ましいと思います。何故なら、一つのドレンが詰まってももう一つのドレンが機能すれば最悪の状況にはならないかもしれないからです。もし、全てのドレンに対し定期的な清
掃が約束されていないのだとしたらオーバーフロー管の設置は急務だと言えるでしょう。一度、点検や清掃をしてみてはいかがでしょうか。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造が存在しなかった時代。日本では陸屋根という形状の屋根はあまり普及していませんでした。屋根は斜めになっているのが当たり前でした。斜めになっていれば雨は"形"で流れて行きます。ところが、鉄筋コンクリート造の建物が登場してくると、主に屋根は平ら(水勾配有り)になります。よって防水を施す必要が出てきたのです。防水材は徐々に進化を遂げ、現在みられる多種多様なラインナップとなったわけです。そして、防水材の性能が上がって来るとその性能に頼った納まりになってしまい、いざ防水材に不具合が発生した場合は考えられないほどの水害に発展する事もあるのです。本来、雨は"形で処理"する方が自然なのです。昔の建物は自然に逆らっていなかったという事です。
※ゲリラ豪雨・・・予測が困難な、積乱雲の発生による突発的で局地的な豪雨を指す俗語である。
気象庁は「局地的大雨」を使用している。【ウィキペディアより抜粋】
※雨量計算(参考)・・・ビルトマテリアル株式会社
http://www.built-material.co.jp/catalog/pdf/siryou003.pdf
※雨とい排水能力の算出(参考)・・・株式会社タニタハウジングウェア
http://www.tanita-hw.co.jp/arch/haisui.html